【お客様からのお問い合わせ】&Freeアンドフリーのマットレスが硬くて困っているのですがムートンシーツは有効でしょうか
本日、県外のお客様から電話のお問い合わせを頂戴しました。(40分ほど電話でお話しさせて頂きました)
細かい部分は省略しますが、お客様の話を要約すると
&Freeの一番硬いマットレスを買ったが、硬すぎて横向きで寝ると肩が痛い。
そこでマットレスを購入した店舗に相談に行ったらヘルシオンとムートンシーツを勧められた。
結局ヘルシオンを購入したものの、アンドフリーのマットレスの上にヘルシオンを敷いても結局改善はなし。寝心地的にもあまり良くない。
再度店舗に相談したら、「ヘルシオンはマットレスの下に敷いてください。温熱の効果は薄れますが、陰電位の効果はあります。マットレスの上にムートンシーツを敷くと楽になりますよ。」と言われた。
そこで現在ムートンシーツの購入を検討しているが、そちら(快眠屋おの)で販売しているウールベッドパッドとどちらがオススメか?
という趣旨のご相談です。
結論としては
「ムートンシーツを敷くのはやや的を外した改善方法なので、今回のケースではムートンシーツでも、ウールベッドパッドでもなく、まず最初にソフトフィットオーバーレイを検討してください。ウールベッドパッドはその次です。」
ということになるのですが、寝具店側の対応にかなり違和感があったのと、同様のお悩みを抱えていらっしゃる方が他にもいらっしゃるかもしれないということで、今回ブログで取り上げさせて頂くことにいたしました。
賛否両論あると思いますが、どうかご容赦ください。
さて、今回のご相談の中で僕が違和感を覚えたのはこの3点です。
- なぜ&Freeアンドフリーの中で最も硬いマットレスなのか
- なぜそこでヘルシオンを提案するのか
- なぜそこでムートンシーツを提案するのか
尚、これらは全て我々寝具業界サイド、販売店側に対する違和感です。言うまでもないことですがお客様に落ち度があったとは思っておりません。
以下、それぞれについて説明しましょう。
目次
①なぜ&Freeアンドフリーの中で最も硬いマットレスなのか
さて、話を辿ってみると、元々は購入したマットレスが合わなかったということがそもそもの発端です。
こちらのお客様は元々は細身の女性ということですから、&Freeアンドフリーだろうと、AiRエアーだろうと、FitLaboフィットラボだろうと、MuAtsuムアツだろうと、ほとんどのモデルは硬すぎて不適格な可能性が高い。ましてや最も硬いモデルですからさもありなんです。(これは商品の良し悪しではなく相性の問題です)
特に横向き寝の場合は、背骨をまっすぐに保ちつつ、肩と大転子のプレッシャーを和らげることが必要ですが、こうした厚み10cm前後のウレタン系マットレスはおしなべて硬いものが多いため、体重が軽い人はその軽さゆえに横になっても肩とお尻が沈まない→背骨がまっすぐにならず骨格が歪む。また肩と大転子のプレッシャーを軽減することも難しいのです。基本的には仰向き寝用と考えてもらっていいでしょう。(横向きの快適さを追求するならプラスアルファでオーバーレイが欲しい)
こういった前提を元に考えると、販売店はもう少し違う視点からのアプローチをすべきだったのではないかと思えます。
「後出しジャンケンならなんとでも言えるよな。結果論じゃん。」と感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、これは少しだけ提案を間違ってしまったというレベルではなく、大幅に方向性を間違えているという話なので……
尚、今回の件とは直接関係ありませんが、一般論として特定のブランドのマットレスしか扱わないお店の場合はこうした行き違いが起こりやすい傾向にあります。特定ブランド専門の場合、どうしても寝心地のバリエーションが限られてしまうので、自分の手札の中で無理やり売り込もうとするとミスマッチな提案が生まれやすいのです。特に尖ったブランドほどそのリスクが高くなります。また知識も偏りがちになります。
一般のお客様にとっては「他にも○○を置いているお店はあるけど、いろんなブランドを置いているセレクトショップよりも○○専門店の方が知識も豊富だろう。よし、そこに行ってみよう!」となるのは当然のことなのですが、視野を広げてみたら○○よりも△△の方がより自分に適していたなんてことはザラにある話。
マットレスのようにブランドによって使用感が大きく変わるジャンルの商品に関しては、下手に特定ブランドの専門店に行くよりも、様々なブランドを横断的に把握して深い知識を持っているセレクトショップに行った方が解像度が高くなることもあるので、もしお近くにそういうお店があればまずはそこに行ってみることをオススメします(※とはいえそのセレクトショップが単に商品を並べているだけで、ノウハウも知識も何もないレベルだと意味がないのでご注意ください)
②なぜそこで温熱電位治療器のヘルシオンを提案するのか
次に気になった点は「なぜ肩の痛みがあるお客様にヘルシオンを提案したのか?」というところです。
ヘルシオンとは敷布団であると同時に、加温機能と陰電位機能を備えた家庭用治療器です。価格はシングルサイズで約24万円。(当店でも販売しています)
https://www.nishikawa1566.com/contents/healthyon/
上に公式サイトリンクを貼っておきますが、簡単にいうと身体を暖めて血行不良を改善したり神経痛を和らげたり、マイナス電位(マイナスイオンではありません)で頭痛や肩こりを緩和する効果が認められています。
敷布団という形をとっているものの、どちらかというと電気製品に近いもので、例えばマットレスの宣伝で謳われているような「体圧分散性」「姿勢の保持」「寝返りのしやすさ」といった機能は正直微妙です。普通の固わた敷布団とそこまで大差がなく、寝具としての寝心地は単に硬い敷布団と思って頂いて差し支えありません。
お客様はアンドフリーのマットレスが硬いと伝えたらこのヘルシオンを勧められたということですが、これは我々からすると意図がよく分からない提案です。
今回のケースでは、マットレスが硬くて肩が圧迫されているのが最大の原因なわけですから、その硬いマットレスの上にまた硬いヘルシオンを敷いても意味がありません。加温機能で身体を暖めて血行を良くしようと促しても、ヘルシオン自体が身体が圧迫して血行不良を起こしているのでは本末転倒。いくらヘルシオンに肩こりや神経痛を緩和する効果があるといっても、それ以上のマイナスを引き起こしてしまっては意味がないのです。
ヘルシオンはあくまで家庭用の治療器であって、魔法の力で即座に痛みを取ってくれるような代物ではありません。それよりも、アンドフリーのマットレスの上に弾力性とソフトさを持ち合わせた薄型のオーバーレイマットレスを載せた方がよほど効果的です。しかも価格は6分の1程度。ヘルシオンを使うのは、電車で一駅の距離なのに、あえて高額な飛行機に乗って回り道をしているようなものです。しかも目的地に到着できない可能性すらあるという……。
またヘルシオンをアンドフリーのマットレスの下に敷いて下さいという案内があったようですが、そうなるとヘルシオンのウリの一つでもある温熱治療の効果が体までほとんど伝わらなくなってしまいますから、いよいよもってヘルシオンを追加購入する意味が分からなくなってきます。(※上に乗せるマットレスの厚みが3cm前後なら温熱効果を感じることができます)
我々もヘルシオン自体は総合的に見て素晴らしい商品だと思っておりますが、それは正しい運用があってこその話。適材適所を見極めることが何より大切です。
③なぜそこでムートンシーツを提案するのか
繰り返しになりますが、今回はお客様の骨格・体重に対してアンドフリーのマットレスが硬すぎること≒体圧分散性が低いことに主な原因があるわけですから、マットレスの上に何かを重ねて全体の寝心地をソフトな方向に調整し、体圧分散性を向上させるのが妥当な線です。
ただヘルシオンは体圧分散性に優れた寝具ではありません(そもそも用途が違う)ので、マットレスの上に重ねても特に改善が見られなかったわけですね。
ですがだからと言って、ムートンシーツを乗せましょうというのもまたよく分からない提案です。これではヘルシオンの二の舞でしょう。
改めて申し上げておくと、ムートンシーツは羊の毛皮で、主に冬場の寒さ対策に使用する寝具、要は防寒寝具です。(夏も快適という話もありますが、それは住環境と体質に左右されるので今回はスルーします)
クオリティの高いムートンシーツは毛の密度が高く、毛の一本一本が身体を支えてくれるので体圧分散性に優れているという話もありますが、ムートンシーツの本分は高い断熱性と吸湿発散性の両立性にあるのであって、体圧分散性云々はあくまで副次的なものです。いくら毛の密度が凄かろうと、毛皮自体は伸びませんし、高弾性ウレタンやラテックスのようなクッション性・伸長性があるわけでもないので、身体の凹凸にスムーズに適応することは困難です。
体圧分散性に優れているというのは普通の敷パッドやシーツと比べてというレベルのことで、身体を支えることを目的に設計開発された商品には到底及びません。むしろ組み合わせるマットレスとの相性によっては、寝返りがうちにくくなったり、かえって体が圧迫されるケースすらあります。
我々もムートンシーツの魅力は十分に理解しているつもりですが、やはりムートンシーツもヘルシオンと同様に魔法の道具ではありません。マットレスの上に重ねれば、不思議な力が働いて腰痛や肩こりを治してくれるような都合のいいものではないのです。
ところが寝具業界には「困ったらムートンシーツ!」というようにやたらムートンシーツを神格化する風潮があります。「購入したマットレスの寝心地がイマイチしっくりこないんですが。。。」とお店に伝えると「それじゃあムートンシーツを重ねるといいですよ!値段は50万円です!」といった意味不明な営業をかけられることも珍しくありません。実際にちょこちょこそういう話を耳にします。それが営業マニュアルになっているのでしょう。
お客様からすると数十万円もするものなんだから快適に違いないと思ってしまうと思いますが、恐らくそれを紹介してくれている販売員さんも特に明確な根拠があって紹介しているわけではありません。そういうものだから、上司に言われたから、寝具メーカーがその売り方を推奨しているからというのが大方の理由ではないでしょうか。
例えば「寝たきりで体が動かせないので、褥瘡予防のために、極力蒸れ感をなくしつつ適度に体圧を分散したい。」「家が非常に寒いが、電気の力を使わずに暖かく寝たい。」「ごちゃごちゃうるせえ、私はムートンシーツの感触が理屈抜きに好きなんだよ!」という場合はムートンシーツは非常に有効ですが、今回のお客様のケースだとムートンシーツである必要性が感じられない上に、それに何より肩の痛みを軽減するという本来の目的を達成できない可能性もそれなりに高いのです。
お腹が痛くて病院に行ったら保険対象外の超高価な咳止めの薬を処方されたようなイメージですね。
それよりも、アンドフリーのマットレスの上に弾力性とソフトさを持ち合わせた薄型のオーバーレイマットレスを載せた方がよほど効果的かつ経済的です。
根拠のある提案を目指そう
とはいえ、実はここまでの流れは我々業界の人間からすると全く予想できない話ではありません。
というのも整圧マットレス(今は&Freeマットレス)、ドクターセラ(今はヘルシオン)、ムートンシーツは、今でもクラシックな寝具店にとっては三種の神器なんですよね。恐らく、10年以上前、それこそ20年ほど前から、大手寝具メーカー傘下の専門店では、一人のお客様に対してこの三種の神器を一通り販売するのが基本の営業スタイルとなっていたはずです。
ただこれら三種の神器を全て同時に使用した場合、それぞれの良いところを打ち消しあう部分もあるので、1+1+1=3になるどころか、1+1+1=2みたいな結果になってしまう。
最初からこれらを組み合わせることを前提に設計された商品ならそうはならなかったのでしょうが、この三種の神器は単に寝具業界の高額品をなんとなく寄せ集めたもの。「完全に無駄ではないものの、金額に見合っているかというと疑問。同じ金額を出すならより効率的かつ快適な提案ができるはず。」というのが僕個人の意見です。
既にこの組み合わせをお使いになっておられる方にとっては不快極まりない内容かと思いますが、決してお客様を否定しているわけではなく、そういった提案を今でもしてしまう寝具業界に向けての発言です。
また他人事のように言っておりますが、この内容はかつての自分達にも当てはまる部分があり、大いに反省すべき点と考えております。そして今の我々も全てのお客様にご満足頂けているとは到底言い難く、至らない点が多々ございます。今後もより的確で根拠のある提案をできるように努めてまいりますので、何卒見守って頂けますと幸いです。
快眠屋としてのお客様への提案
今回のお客様はムートンシーツとウールベッドパッドのどちらが良いか?と言う趣旨のご相談でしたが、上記の内容を電話でお伝えさせて頂いたところ、お客様自身も違和感を持っていたこともあり大変よくご理解頂くことができました。
冒頭で述べたように今回のケースではムートンシーツはいささか的外れな提案です。そこで当店としてはこちらのソフトフィットオーバーレイを提案させて頂きました。
詳しくは上記リンク先にて解説していますが、こちらはマットレスの上に重ねることでマットレスの表面に柔らかさと弾力性を追加する寝具です。
マットレスの上にマットレスを重ねる時は、たとえ体圧分散性が向上したとしても、身体がはまり込んで寝返りが打ちにくくなったり、かえって身体が沈みすぎて姿勢が悪くなるようでは意味がないので、全方位に気を使う必要があるのですが、ソフトフィットオーバーレイはそのあたりのバランスが非常に優秀な寝具です。当店では寝心地の微調整用に使用することもあれば、今回のような「マットレスが硬すぎて身体が痛い」というお客様に提案させて頂くこともよくあります。
ヘルシオンやムートンシーツといった変化球とは違い、目的地(肩の痛みの軽減)への最短ルートを突っ走る寝具だとお考えください。手前味噌で恐縮ですが、費用対効果も耐久性も抜群です。
既にヘルシオンは購入済みということでしたから、下から順に「ヘルシオン→アンドフリーマットレス→ソフトフィットオーバーレイ→ウールベッドパッド→BOXシーツ」という順で使うと全体的なバランスが整うはずです。(※ヘルシオンの温熱効果は泣く泣く諦めます)
ただお話の中で「もうアンドフリーのマットレスは使いません。譲って欲しいという人がいるので、私は自分用に新しくマットレスを買おうと思います。」ということになりまして、それならばこういう組み合わせが良いですよとまた違う寝具を提案させて頂きました。
寝具全般に同じことが言えますが、羽生結弦くんや大谷翔平くんが使っているからといって、それがあなたに合うかどうかは全く別の話です。
マットレスに関しては「本来どうでもいいことをさも大事なことのように宣伝しているケース」がしばしばありますが、とどのつまり
- 背骨の曲線、直線が崩れていないか
- マットレスとの接触面のプレッシャーを解放できているか
- 寝返りがスムーズにできるか
この3点がそれぞれ高いレベルで満たされているかどうかで決まりますので、ポケットコイルの数が多かろうと、新世代の素材が使われていようと、振動が伝わらなかろうと、これらの条件を満たしていないマットレスは不適格です。マットレスそのものに焦点を当てることも大切ですが、それ以上にそのマットレスがあなたの身体にどのように作用するかの方が何倍も重要です。あくまで使うのは人ですからね。
寝具でお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。僕が対応させて頂きます。